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  • 第5話 仕組まれたデート

 

「5月5日土曜日 0:20 隠れなくていいということは素晴らしい。 彼女を正面から見ることができる。 はにかむ笑顔は相変わらずかわいらしい。 彼女の隣に座ってほほ笑む男と 彼女の左手の薬指に光る指輪は忌々しいけれど。 前はその場所は僕のものだったのに、と思うとはらわたが煮えくりかえりそうだ。 でもそれももう少しの我慢だ。 じきにその場所は僕のものになる。 あるべき場所に僕は帰れるんだ」

 

そういえば、と思い返す。 あの人は、言葉巧みに人の中に入っていくのはうまかった。 特定の仲の良い友人はいなかったけれど、一人でいることはなかった。 なんとなく気がついたら、紛れ込んでいる。 そんなのが得意な人だった。

 

偶然を装って出会って。 気がついたら、あたしと彼氏、2人の間に入り込んでいた。 彼氏はすっかり信用している。 「いい人だよね。気が合う」 なんて言ってる。 あたしは怖くて仕方がない。 にこにこと、あの人が微笑んでいる裏で何を考えているのか。 分からない。

 

今日は3人で出かける。 もちろん、最初は、あたしと彼氏、2人で出かけるはずだった。 久しぶりに遊園地に行こうか、なんて言っていたのに。気がついたら、あの人が入り込んでいた。 「いいじゃないか。遊園地なんて、賑やかにワイワイ行ったほうが楽しいし」 人を疑うということを知らない人。 無邪気にそういう。

 

おびえながら、あたしは待ち合わせ場所に向かう。 すでにあの人は来ていた。彼氏はまだ来ていない。彼氏が来るまで、どこかで時間を潰そうと思った。 その瞬間に、あの人があたしの姿を捉える。 こっちに向かって手を振る。 怖かった。

 

負けず嫌いなあたしは、それが悟られるのが怖くて、必死に虚勢を張る。 笑顔を浮かべる。 「早いね」 「そう?」 「うん。僕と出かけるときはいつも遅刻していたのに。彼は、君が遅れると怒るのかな」

 

「じゃあ行こうか」 「えっ?」 彼はまだ来ていない。待ち合わせの時間にもまだなっていない。 「まだ彼が来てないじゃない」 「来ないよ」 「え…?」 「風邪ひいたから2人で楽しんできてくれって。さっきメールが来た。読む?」

 

勝ち誇ったような笑顔に背筋が冷たくなった。 手首を掴まれ、引っ張られる。

 

「さあ行こう?」

 

 

 

 

 

  • Writing
    • 福田了子(フクダ リョウコ) 
    • 東海大学文学部文芸創作学科卒業。
    • 現在、フリーライターとして活動中。