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そういえば、と思い返す。 あの人は、言葉巧みに人の中に入っていくのはうまかった。 特定の仲の良い友人はいなかったけれど、一人でいることはなかった。 なんとなく気がついたら、紛れ込んでいる。 そんなのが得意な人だった。
偶然を装って出会って。 気がついたら、あたしと彼氏、2人の間に入り込んでいた。 彼氏はすっかり信用している。 「いい人だよね。気が合う」 なんて言ってる。 あたしは怖くて仕方がない。 にこにこと、あの人が微笑んでいる裏で何を考えているのか。 分からない。
今日は3人で出かける。 もちろん、最初は、あたしと彼氏、2人で出かけるはずだった。 久しぶりに遊園地に行こうか、なんて言っていたのに。気がついたら、あの人が入り込んでいた。 「いいじゃないか。遊園地なんて、賑やかにワイワイ行ったほうが楽しいし」 人を疑うということを知らない人。 無邪気にそういう。
おびえながら、あたしは待ち合わせ場所に向かう。 すでにあの人は来ていた。彼氏はまだ来ていない。彼氏が来るまで、どこかで時間を潰そうと思った。 その瞬間に、あの人があたしの姿を捉える。 こっちに向かって手を振る。 怖かった。
負けず嫌いなあたしは、それが悟られるのが怖くて、必死に虚勢を張る。 笑顔を浮かべる。 「早いね」 「そう?」 「うん。僕と出かけるときはいつも遅刻していたのに。彼は、君が遅れると怒るのかな」
「じゃあ行こうか」 「えっ?」 彼はまだ来ていない。待ち合わせの時間にもまだなっていない。 「まだ彼が来てないじゃない」 「来ないよ」 「え…?」 「風邪ひいたから2人で楽しんできてくれって。さっきメールが来た。読む?」
勝ち誇ったような笑顔に背筋が冷たくなった。 手首を掴まれ、引っ張られる。
「さあ行こう?」