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  • 第4話 偶然のフリをして

 

「4月22日日曜日 10:42 耐えきれない。 じっとしていられない。 何をしていても、彼女の姿がちらつく。 もう僕の目を、姿を、彼女が見なくなって、どれぐらいの月日が経ったのだろう。 彼女の中で『僕』という存在が薄れていく。 我慢できない。 彼女は今、何をしているんだろう。 気になる。気になる。気になる。 じっとなんて、していられない」

 

さまざまなことを想像した。 あたしが彼を襲うこと。 このまま、あたしのことを見ているだけで終わるのだろうか。 あたしは、彼から、逃げることができるのだろうか。

 

待ち合わせ。 人が溢れる改札の前で、あたしは注意深く周りを見回す。 いつしか、そうすることが、習慣になってしまっていた。 ひとりになると、落ち着きがなくなる。 どこで、あたしを見ているの? 答えのない問いを、心の中で繰り返す。

 

「おまたせ」 聞き慣れた声。肩に触れられた手の感触。 誰のものか分かっているのに、あたしは肩を震わす。 振り向いて、目の前にいるのは愛しい人のはずなのに。 年上のあたしの恋人は、とびきり優しくて、素敵な人だ。 そんな彼は、最近、あたしの顔を見るたびに決まって同じセリフを言う。

 

「なんか、元気ないね」 それに対して、あたしは、そんなことないよ、と笑っていうことしかできない。 「本当に? いつも、何かに怯えているみたいだ」 「本当。何もないよ」 あたしの答えに眉をひそめながら頷く。

 

あの人が、あたしの大切な人に何かするんじゃないか。 軽い気持ちで男と付き合っていたあたしのことを軽蔑するんじゃないか。 いまどき、よくある話かもしれないけれど、些細な悪いことでも知られたくない。嫌われたくないから。 今は、好きな人に嫌われたらどうしようという怯えが少し分かる。好きな人にフラれて諦めきれない気持ちも。

 

いつも、彼と会った日の夜は怯えている。あのBlogに彼の存在が書かれているのではないかと。 むしろ、あたしのことを毎日のように見ているあの人が、恋人の存在を知らないはずがない。Blogに書かないことには理由があるのだろうか。

 

「きゃっ」 前から歩いていた人に勢いよくぶつかり、尻もちをつく。 「おいおい…大丈夫か? もうボーッとしてるから…」 彼が呆れたように言う。 それから、ぶつかった相手に頭を下げる。すみません、こいつ、なんか考え事してたみたいで。

 

「いいんですよ。僕もぼんやりしていたんで」 聞き覚えのある声に、あたしは尻もちをついたまま、顔をあげた。 「大丈夫ですか?」 ぶつかった相手があたしに手を差し伸べて言った。 そして、目が合うと、にっこりと微笑んだ。

 

君の見えないところで、彼をいじめても仕方がないでしょう? 彼の見えないところで、君をいじめても仕方がないでしょう? 僕の大切なものを奪った奴なんて許さない。 でも、僕の物にならない君も、許さない――。

 

  • Writing
    • 福田了子(フクダ リョウコ) 
    • 東海大学文学部文芸創作学科卒業。
    • 現在、フリーライターとして活動中。