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  • 第3話 間接的な接触

 

「4月15日日曜日 23:57 快晴の休日。彼女は何をしているのだろう。 気にし始めるとじっとしていられなくなった。 でかけよう。彼女が感じられるあの場所へ。 買い物にきた彼女と会えるかもしれない。 そんな期待をして、出かけた。 何時間も何時間も見つめ続けた。 暗くなり始めても、つかない部屋の灯り。 いなかった。 彼女はいなかったんだ。一日中。 ああなんてことだろう。無駄になった僕の一日をどうしてくれようか――」

 

実害があったのは、久しぶりだった。

 

あたしがブログの存在を知らなかったころ、ゴミが荒らされたことはあった。あと、郵便物がなくなったことも。 それも最近ではすっかり無くなっていた。

 

先輩と久しぶりのデートだった。 朝から出かけて、映画みて、買い物して、ごはん食べて。 帰りに飲んだカクテルで気分がよかった。 フワフワとした体で部屋のドアの前に立った途端に、冷水を浴びせかけられたかのような寒気に襲われた。

 

ドアが真っ赤に染まっていた。転がった小さなペンキの缶。中に入っていた赤いペンキが流れだしていた。 そして、ドアの前に捨てられた何かの動物の排泄物が発する、ひどい匂い。 誰がやったのかなんて、考えるまでもない。思わず、携帯を取り出した。 取り出したはいいけれど、あたしの手は止まった。

 

誰に、電話するの?

先輩?

先輩に電話して来てもらう。先輩はきっと怒るだろう。

 

そして、この惨状を作り出した「犯人」に対して、何らかの行動を起こしてくれる。きちんとした大人の対応を。 でも、あたしは、先輩に「犯人」との関係をどういうふうに説明すればいいのだろう。 ただの元・恋人がこんなことをする? 逆恨み。行き過ぎた愛情。

 

よくある話。

けれど、今の状況を引き起こしたのは少なからず、あたしの責任でもある――。 そう考えると、携帯を操作する手も止まる。 指先から、冷たくなるのを感じた。どうして、あたしは誰にも助けを求められないんだろう。 そんなにも、あたしはいけないことをしたというのだろうか。

 

隣の部屋のドアが開く。 ドアノブが回る音にさえ、体を震わせる。 隣人の女性は、汚れたドアと床、そしてあたしを見比べて、眉をひそめた。

 

「2時間ほど前に大きな物音がしてましたよ」

 

すがるようなあたしの視線に気づいたからなのか、女性は気まずそうに口を開いた。

 

「ちゃんと片付けてくださいね? 近所迷惑ですから」

 

そう言うと、女性はあたしに背を向けて、エレベーターのほうへと歩いていった。 鼻をつく、ひどい匂い。匂いで、頭が痛くなる。鈍い痛みで、この状況を現実だということを思い知らせられる。いまのあたしは悲しくなるほどひとりぼっちで、そして、滑稽なほどに怯えている。

  • Writing
    • 福田了子(フクダ リョウコ) 
    • 東海大学文学部文芸創作学科卒業。
    • 現在、フリーライターとして活動中。


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