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  • 第2話 見られている恐怖

 

「TVをつけると、彼女の好きなアーティストが出ていた。 新曲が出たという。ふいに思い出して、彼らの曲を聴いてみた。 彼女がよく聴いていた曲たち。今日は行かないつもりだったけれど。なんだか呼ばれている気がした」

 

毎日、元カレのblogをチェックする。 あたしのことしか書かれていないblogを。

今日の更新は2時間前。20時34分。

 

大抵は、その日のあたしの行動が書いてあるだけだった。 けれど時々、これから行くよ、と言っているんじゃないかと思えるようなものもある。 あたしが好きなお店の前を通りがかったとき。 あたしと同じ香水をつけている人とすれ違ったとき。 あたしと同じピアスをつけている人を見たとき。 あたしを連想させるものを見ると、彼は、blogにこう記す。

 

『なんだか呼ばれている気がした』

 

あたしはそれを読むたびに後悔する。 読まなければよかった、と。 そして、その記述が増えていくたびに、あたしの好きだったものがひとつ、またひとつと減っていく。 時間を確認する。 逃げ出せるなら、今すぐこの家から飛び出したい。

 

けれど――。 もう一度、救いを求めるように、時計を確認する。 きっと、もう、いる。

 

カーテンの隙間から、そっと外を見る。 通りを挟んで、1軒だけ、ポツンとあるコンビニ。 以前はよく行っていた。でも、今は行かない。怖いから。 雑誌売り場に1人の男が立ち読みをしているのが見えた。 ううん。雑誌は広げているだけ。 部屋からは確認できないけれど、雑誌を読んではいない。 だって、ほら、ページはずっと同じ。 その視線の先にあるのは、あたしの部屋。

 

バレないように、そっとカーテンを元に戻す。 それから、部屋の灯りを消す。 息を潜めるようにして、膝を抱えて、床に座り込む。 でかければ、つけてくる。 あたしがどこへ行くのか気になるから。 店に入れば、あたしからは見えない場所、でも彼からはあたしが見えるであろう場所にじっと立ちつくす。

 

彼があのコンビニにいる限り、あたしはこの部屋から見動きをとることができない。 灯りを消して、じっとしていれば、もう眠ったのだと思い、帰っていく。 でも、帰る前には必ず、あたしの部屋の前にやってくる。

 

コン、コン、コン、ココン。

 

いつも同じリズムで、同じ回数、ドアをノックして帰る。 今日も、来たよ。 そう言い残すように。 背筋が冷たくなる。でも、どうすることもできない。

 

一人の夜が更けていく。

夜と視線に怯えて。

朝は、まだ、遠い。

 

  • Writing
    • 福田了子(フクダ リョウコ) 
    • 東海大学文学部文芸創作学科卒業。
    • 現在、フリーライターとして活動中。


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