待ちに待った春、カチカチに凍っていた土が溶けるやいなや地面に刺していた棒を抜き、トレリス建設を始める。穴を掘り、柱を埋め込みセメントを流す。またしても肉体労働の日々。けれども労働の成果が目のあたりに見れるのはうれしものだ。
「よーし、完成」「やったー」 作り始めて一ヶ月たって、ようやくトレリスが出来上がった。これだけで一気に、庭のグレードが上がったような気がする。
「すごいよね?」「うんうん、すごいって」 単純な二人は、これでまた庭に対するテンションが、ぐんと上がってしまったのだ。 「よーし今度はパスを作るぞ」夫が宣言する。「パス?」 「道のこと。地面を掘った時に出た石が山ほどあるから、これがレンガの変わり」
庭の中にパスが通る、芝を張る、トレリス にからませるツルバラを植える。 庭が少しずつだが変化していく。もちろん庭を作り始めて二年にして、あこがれのイングリッシュガーデンができるとは思ってもいない。けれども一年前の庭に比べると、確実に進歩している。
庭を作り始めて気がついたことは、園芸には終りがないということだ。
垣根にするツゲを植え、日本では販売されていない種をイギリスから取り寄せと、園芸熱は冷めることがなくいまだに続いている。 庭を作り始めた十年以上たった今、早く大きくなれと熱望した木々は、毎年剪定しなければならないほど大きく枝を茂らせ、石のパスは、その年月を語るかのように苔むしている。 本場のイングリッシュガーデンには、程遠いかもしれないが、私たちの庭ができあがった。
カレル・チャペックは[園芸家十二ヶ月]の中で「われわれ園芸かは未来に生きている」 と書いている。 来年、庭の木はもっと大きくなっているだろう。五年後、十年後は・・。 庭を作り始めて、年月を重ねる楽しさを知った。
来年は、どんな花が咲いてくれるだろう?
せっかく作った庭を、一からリセットすることに決めたその年の冬、夫とともに、どんな庭を作りたいかもう一度真剣に考えてみた。イメージはある。けれど、これが本当にできるのかどうか、まず庭をきちんと計測。
計った面積からトレリスの位置、高さを決め、 設計図を元に、雪が積もった庭に棒を突き刺していった。こうすることによって、より具体的なイメージが湧いてくるのだ。