言葉は悪いけど、こういう人が身近に一人いるとすごく便利です。何かを食べようというときにウダウダすることがない。デートじゃなくても「渋谷に行くなら○○がいいよ」とか教えてくれるし。ただ問題は、Fさんが自分で選んだ店に文句をつけるクセ。やれ接客がダメだの、このパスタは化学調味料の味がするだの、落ち着けないだの、黙って食べているところを見たことがない。
おいおい、オススメのお店を紹介してくれたわけじゃないの? 何よりもその発言で、この場全体の空気が重苦しくなっていることには気づかないのか? 毎度のことなので流していましたが、私の中ではデートを重ねるごとに違和感を覚えていたわけです。
何が起こったかわからず呆然とする私。カウンターから板前さんたちも様子を窺っています。ほどなくして戻ってきたFさんに「どうしたの?」と聞いたら「こんなの、食えたもんじゃねぇ」と寿司を指すのです。よくよく聞いてみれば彼曰く“マグロの漬けにぎり”が傷んでいるとのこと。だからってあからさまに店の真ん中を横切ることはないのでは…。
ますますムードが悪くなったふたりの間に入るように、板前さんがやってきました。 「お客様、何か問題がございましたか?」するとFさんは笑いながらこう言ったのです。 「いえ、最近体調が悪いせいか気分が悪くなってしまって…。びっくりさせて申し訳ありません」
えぇっ、言わないの!? なんで!? 板前さんが去ってから私もさすがにひと言。 「私にはわからなかったけど、ネタが傷んでいたんだったら指摘するべきだったんじゃない?」「だっておまえもいるし、ここでもめるのは大人のやり方じゃないから」 じゃあその、お店に対するこれみよがしで厭味な態度はオトナのやり方なのか!? きちんと指摘した方がお店の今後のためにも良いはず…。
言いたいことは山ほどあったけど、もう何も言いませんでした。そして、この人のために料理したくない、と強く思いました。楽しい食卓が全くイメージできない! 私にとって食事中に感じた“ダメポイント”はすごく大きいです。
だって、一緒に住むとなったら毎日のことですもの。 その後、私が結婚した男性は、作ったものには文句をつけることもなく、なんでも食べてくれます。もしかしたらそれって、すごく幸せなことかもしれないよね。
喉、渇かない? そこの裏にカフェがあるんだけど」 「いいねー。行く行く」デート中にありがちな会話です。 このFさんは飲食店にやたら詳しい。携帯のメモリーはカフェやらレストランやらのデータでいっぱいだったようです。